Vol.25 No.8
[特集] 水の知られざる機能


農林水産省における「水の科学」への取り組み
農林水産省 農林水産技術会議事務局    山本 和貴
 農林水産業に欠く事のできない水について概説し、農林水産省での研究開発における取り組み状況を解説した。 水の異常性、水分子クラスター、クラスレイト化合物、質量分析によるアプローチ、水の活性化処理を例に水の特性について概説し、 さらに、わが国及び農林水産省におけるナノテクノロジー・材料分野のなかでの水の研究開発の位置付けと、 農林水産技術会議事務局における研究プロジェクトでの取り組みとについて解説した。
←Vol.25インデックスページに戻る



植物と水 −植物における水のイメージング−
東京大学大学院 農学生命科学研究所    中西 友子
 水は植物にとってとりわけ重要な意味を持っており、植物中の水の動態を調べることは生きた植物活動研究そのものである。 しかし植物における水の知見は非常に少ないことから、われわれは水のイメージングという未知な課題に取り組んできた。 まず、初めて中性子線を用い植物中の水動態の可視化・解析を行い、次に放射性核種で水を標識しリアルタイムでの水動態を 調べ始めている。そこで最近われわれが行ってきた水のイメージングの一部を紹介する。
←Vol.25インデックスページに戻る



機能水としての”水”の将来展望
(独)食品総合研究所    五十部誠一郎
 水(水溶液)に処理を施して、微生物制御効果などの機能化を付与する処理が注目されている。電解水処理などの一部の機能水を主体とした研究開発が進んでいる。 さまざまな水処理は、食品製造や農作物栽培時に化学物質の過剰な利用や多くのエネルギーを投入している処理に比べて環境保全型で省エネルギー的な処理として期待されており、 効果の発現を科学的に解析して処理技術が確立することが望まれる。各種処理での解明されなければならない課題や利用が期待される分野について紹介する。
←Vol.25インデックスページに戻る



農業分野における機能水利用最前線
(独)農業技術研究機構 野菜茶業研究所    雁野 勝宣
 国民の環境や食品への安全性への関心が高まるに伴い、機能水を使った民間農法の導入が行われているが、農業者などの試行錯誤により取り組まれているのが現状である。 しかし、全国的な波及効果が期待されるものの、中立的な立場による科学的な裏付けや技術の体系化が十分なされていないのも事実である。 現在、各種の研究機関が、適切な技術導入を行うにあたって、機能水の科学的な効果メカニズムの解明や評価システムおよび利用技術の確立に取り組んでいる。 ここでは、わが国に広がっている機能水の利用現場の調査を通じて得た最新情報や研究動向を紹介する。
←Vol.25インデックスページに戻る



食品加工分野における調理用電解水の利用
ホシザキ電機株式会社 島根製品開発本部    小林 健治
 希薄な塩類を含む水を電気分解して得られる電解水は電解方式や原水の違いにより多くの種類があり、食品加工、医療、農家など多くの分野で使用されている。 電解水の1つである調理用電解水は水道水を隔膜電解槽で電気分解したものであり陰極側からアルカリ性電解水、陽極側から酸性電解水が得られ、 主に食品加工に使用されている。食品加工に使用した例は大豆加工、炊飯、清酒醸造、だし取りなどがあり、これらの食品に対する調理用電解水の有効性が報告されている。 これら食品加工への効果の作用機構も明らかにされつつある。また、アルカリ性電解水はその還元力と低濃度の溶存酸素により抗酸化活性を有していることもわかり、 新しい利用展開が期待される。
←Vol.25インデックスページに戻る



エネルギー・環境分野における利用最前線  −超臨界水−
広島大学大学院 工学研究科    松村 幸彦
 圧力を高くすると水の沸点も高くなるが、ある圧力以上では沸騰そのものが起こらなくなる。この圧力を臨界圧力(218気圧、22.1MPa)、 その時の沸点に対応する温度を臨界温度(374度C、647K)とよび、この両者で決まる臨界点以上の高温高圧の水のことを超臨界水と呼ぶ。 超臨界水は、気体と自由に混ざり、常温では水と混ざり合わない有機物とも自由に混ざる特徴をもつ。さらに高温高圧のために水そのものも反応性に富み、 このことを利用して超臨界水中で有機物を分解ガス化する超臨界水ガス化や、同じく超臨界水中で有害物質を酸化分解する超臨界水酸化の技術が研究・開発されている。 本稿では、これらの技術の開発状況、技術開発課題などについて概説する。
←Vol.25インデックスページに戻る



医療分野における電解水利用最前線
国立感染症研究所    堀田 国元
 1980年代後半に日本で独自に開発され、殺菌活性が高く、人にも環境にもやさしく、耐性菌がでにくいことが明らかになっている強酸性電解水が、 その科学的基盤の解明や厚生労働省の薬事認可に伴って注目されている。医療分野においてこれまでに認可された用途は、手指および内視鏡の洗浄消毒であるが、 そのほかにも血液透析装置の洗浄消毒に有効な方法が確立されるなど、用途拡大に向けての努力がいろいろなされている。 また、強酸性電解水は微酸性電解水とともに食品添加物として正式指定された(2002年6月)。 ここでは、医療分野における強酸性電解水の使用現状と課題などについて紹介する。
←Vol.25インデックスページに戻る