Vol.31No.4
【特 集】 農水産物・加工食品原料の産地判別


食品の表示制度と鑑定技術
(独)農林水産消費安全技術センター    植木  隆
 店頭には生鮮品が原産地表示とともに並んでおり,加工食品の限られた容器包装の面積にさまざまな情報が記載されている。 食品表示には原材料名や賞味(消費)期限などの必ず伝えるべき事項およびさまざまな情報の表示方法について幾つかのルールが存在する。 そして,これらの原材料名や原産地表示などが正しいかどうかを確認する鑑定技術も進歩してきている。JAS制度を中心とした食品表示制度と鑑定技術の概要を紹介する。
(キーワード:食品表示,JAS法,鑑定技術,原産地表示)
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農産物・加工食品原料の産地判別技術の現状と展望
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所    安井 明美
 産地表示の信憑性を科学的に検証するためには,産地判別技術が必要である。無機元素組成,安定同位体比,DNA解析などを利用した技術が開発されている。 これには,測定技術に加えてケモメトリックス(計量化学)による分析値の解析が必要である。無機元素組成を利用した方法は,ネギ,黒大豆(丹波黒),タマネギなどについてマニュアルが作成されて,公開されている。 規制にも係わる技術であるので,試験室間の再現性が必要で,複数の試験室の共同試験による方法の妥当性確認が求められる。
(キーワード:産地判別,無機元素組成,安定同位体比,DNA解析,統計解析,妥当性確認)
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農産物におけるDNA鑑定の現状と展望
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター    矢野  博
 農産物・食品に対する消費者の信頼確保や育成者権を侵害して輸入されてくる農林水産品の水際(税関)での取り締まりが強化されている。 このような状況下,一部の農産物(収穫物)と食品(加工品)ではあるものの,DNA分析による品種識別技術が開発され,食品表示の適正化や育成者権侵害紛争の早期解決などの現場で利用されるまでに至っている。 しかしながら,開発された品種識別技術が「DNA鑑定」と称されて,社会への貢献を確実なものにするためには,技術の妥当性確認や手法を客観的に検証するシステムの整備を図る必要がある。
(キーワード:DNA鑑定,品種識別,農産物)
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DNA分析による米の産地判別
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所    大坪 研一
 米の産地判別技術の開発に取り組んだ。〕化学的フィンガープリントは産地判別には不適当であった。 同一品種の原種同士のDNA塩基配列の相違に基づくPCR法では,コシヒカリの32産地の原種同士の差異を識別できるDNAマーカーを開発することにより, 原理的に産地の識別の可能性が示されたが,原種同士の差異はきわめて微妙であり,キットなどによる実用化にはかなりの困難が伴うと考えられた。 F碓貮兵錣瞭閏前篥岨匏賄のDNA塩基配列の相違に基づくPCR法の場合,いもち病抵抗性に着目したDNAマーカーを開発することにより, 原種同士の識別よりも明瞭な識別が可能であり,コシヒカリとササニシキの同質遺伝子系統を識別することが可能になった。 今後,判別用キットの開発など,実用化の可能性があると考えられた。
(キーワード:米,産地判別,DNA分析)
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野菜類の原産地判別
(財)日本穀物検定協会 東京分析センター    有山  薫
 食品表示の偽装が次々と明らかになるなか,消費者の関心が特に高い原産地表示の真偽を科学的に明らかにする手法の開発が求められている。 そのための手法として,元素組成に基づく手法が開発され,市販品などを対象とした検査に利用されるようになってきた。 本稿では手法の原理を説明した後,実例としてタマネギの判別法を紹介し,今後を展望する。
(キーワード:産地判別,元素組成,ICP,ケモメトリックス,産地偽装)
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緑茶の無機元素組成比および品種識別による産地判別
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所    木幡 勝則・氏原 ともみ
 茶葉中のAl,Ba,Cu,Fe,Mg,Mn,Ni,Rb,Sr,Znの10種の無機元素含有量を用いて,判別分析を行うことにより,98%の高い的中率で国内産か中国産かを判別できる。 同様にして,95%の高い的中率で静岡県産か三重県産か鹿児島県産茶かを判別できる。また,CAPSマーカーと葉緑体遺伝子を用いて,緑茶の品種識別とそれに基づく品種ブレンド茶の混合割合が推定できる。 国内産品種か外国産品種かを識別することで,限定的ながら品種識別による原産国判別が可能である。無機元素組成比法,品種識別法ならびにトレーサビリティ法との総合化を図ることで, 産地の偽装表示を抑制することのできる実用的な判別法になり得ることが期待される。
(キーワード:緑茶,産地判別,無機元素組成比,品種識別)
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水産分野のDNA分析による種判別とその現状
(独)水産総合研究センター 中央水産研究所    小林 敬典
 DNA上の遺伝的変異は一般にDNA多型と呼ばれ,水産分野においても分析技術は加速度的に進み,増養殖の現場にも応用されつつある。 DNA多型解析技術を用いた水産生物の種,原産地,品種識別の推進を目的に研究を行ってきた。これらの研究から創出されたDNA多型分析法とアプリケーション,研究情報の管理システムの開発も同時に進めている。 本稿では水産分野におけるDNA鑑定の現状について述べる。
(キーワード:DNA分析,mtDNA,水産生物)
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