Vol.2 No.6
【特 集】 漁船漁業における省エネルギー化技術の進展


漁船漁業の省エネ対策としての"エコ運航"
(独)水産総合研究センター 水産工学研究所    明田 定満
 さんま棒受網漁業,いか釣り漁業,かつお一本釣漁業,沖合底曳網漁業では,原油価格の高止まりが漁家経営に深刻な影響を及ぼしており,漁船漁業の省エネ化が喫緊の課題となっている。本論では,設備の新設や改造など経費を必要としない,漁船の運航管理に基づくソフト的な対策(①航行速度を抑える,②船体・舵・プロペラの清掃,③不要な積荷は降ろす等)を漁船漁業の省エネ方策として推奨し,その省エネ効果を解説する。
(キーワード:燃油高騰,漁船漁業,省エネ,減速航行)
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漁船の燃料消費量の「見える化」による省エネルギー
(独)水産総合研究センター 水産工学研究所    溝口 弘泰
 近年の燃油価格の高止まりは,燃料費支出の割合を増加させ,漁家経営を圧迫している。燃料油消費量の削減を行うためには,操業中の燃料油消費量を把握することが重要となる。自動車などの分野では,運転者がリアルタイムに燃料油消費量を把握することのできるシステムが構築されているが,漁船分野ではこのようなシステムが構築されていなかった。そこで,漁船の操船者が船橋で漁船の燃料消費量を可視化しリアルタイムで示す「見える化」装置を開発した。この装置を設置し,活用することにより漁船の燃料消費特性が明らかとなり,漁船漁業の省エネルギー化を進めるための一助となる。
(キーワード:燃油高騰,漁船漁業,燃料油消費量,「見える化」装置)
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九十九里地区の二艘まき網漁業の省エネルギー方策
(独)水産総合研究センター 水産工学研究所    長谷川 勝男・升也 利一・山崎 慎太郎・松田 秋彦
 千葉県九十九里地区のまき網漁業を対象とした地域復興プロジェクトに参画し,二艘まき網漁船の代船建造に際して技術的な協力を行った。ここでは,事業計画で策定されたまき網漁業の収益性の向上と経営の安定を目指した船団のスリム化(操業形態の合理化)と,省エネと作業性の向上を図った「改革型中型2艘まき網漁船」の導入(新船建造)に関係する部分を報告する。
(キーワード:二艘まき網漁業,まき網船団,裏こぎ,漁船の船型,燃料消費の見える化)
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漁船の省エネ船体技術および設計について
(独)水産総合研究センター 水産工学研究所    三好 潤
 漁獲量の減少や魚価の低迷,燃油価格や漁業生産資材の高騰等でわが国の漁船漁業は厳しい経営状況に直面している。既存漁船に対しては,採算性向上のために漁業経営とのバランスからできるだけ安価に採用できる省エネ技術が求められている。また新造漁船に対しては,水産資源管理や漁業経営,船の安全性や労働環境,さらには造船所の建造能力を総合的に考慮した無駄のない設計・建造が求められる。このようなニーズのもと,漁船に適した省エネ要素技術の開発や新しい漁船設計手法の開発が進められている。
(キーワード:漁船,省エネ,既存漁船,新造船,漁船の概念設計)
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サンマ棒受網漁業におけるLED漁灯を用いた省エネ化
一般社団法人海洋水産システム協会    酒井 拓宏
 漁灯を利用する漁業では,他の漁業と比較し経費に占める燃料費の割合が高く,漁業経営を圧迫するひとつの要因となっている。このような状況の下,既存光源とは異なる発光特性を有するLED(発光ダイオード)を活用し,サンマ棒受網漁業における省エネを達成することを目的に4カ年にわたり段階的に実証試験を実施した。結果,既存漁灯を全てLED漁灯に換装し,従前と比較し3割程度の燃料消費量削減を達成し,かつ従前と変わらぬ操業内容で同等以上の漁獲量を確保できることを実証した。
(キーワード:漁船漁業,サンマ棒受網漁業,LED漁灯,省エネ,実証試験)
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底びき網漁業の省コスト化に繋がる新たな漁具・漁法技術
ニチモウ株式会社 研究開発室
東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科
水産大学校 海洋生産管理学科
鹿児島大学 水産学部
熊沢 泰生・平山 完・伊藤 翔
胡 夫祥
永松 公明・酒井 健一
不破 茂
 底びき網漁業の経営は,燃料油の高騰,水産資源の減少,魚価安等の問題から持続が危ぶまれている。そのため,生産現場からは省コスト化技術の導入・普及が強く求められている。底びき網漁業の省コスト化は,操業中の燃料油消費量を軽減する省エネルギー化や漁具を軽量・簡素化して省力化を図ることが有効な手段となるが,その普及条件は,従来と変わらない漁業収入が得られることにある。本論では,様々な省コスト化を行っても従来の漁獲量が得られる技術を紹介するとともに,底びき網漁業の省コスト化に繋がる漁具・漁法の最新技術について述べる。
(キーワード:小型底びき網漁業,省コスト化,省エネルギー化,省力化,燃料油消費量)
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