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薬剤散布で周囲に迷惑をかけないために



 平成18年5月30日、残留農薬に関してポジティブリスト制度が実施されました。 これは残留基準が設定されていない農薬が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度です。

 この文章だけでは分かりにくく、庭木に散布しているだけだから関係ないとお考えかもしれませんが、 近くに農作物がある場合は無関係で済まされないこともあるのです。

 庭木に散布した薬剤が風に流されて隣の作物にかかり(ドリフトと言います)、使用した農薬がその作物に許可になっていない場合に問題が発生する可能性があります。

 殆どの作物で使用する農薬の残留基準が決められておりますが、使用しない農薬については残留基準がありません。 外国の残留基準もないばあい、それらが健康を損なう恐れのない量の残留許容基準として一律基準0.01ppmとしました(説明を簡略化するためはしょっています)。

 例えばA農薬の残留基準が作物Bで2ppmとしても、作物Cに登録が無い場合、一律基準の0.01ppmの残留農薬で出荷出来なくなります。 農家では散布農薬の記録は付けていますので、どこから風で流れてきたか(ドリフト)の問題になるわけです。

 この法律は日本で残留農薬の基準の無い輸入農産物も規制の対象になるように設定されたものです。

 このような法律が最近設定されたことを頭のスミに入れておいてください。

―余談4―
 ポジティブリスト制度があれば、ネガティブリスト制度があるのかとお考えでしょう。

 実は従来の規則がネガティブリスト制度でして、規制の方式は原則自由で、「残留してはならないもの」を一覧表で示しました。 ポジティブリスト制度は原則すべて禁止し、「残留を認めるもの」のみを一覧表で示す方式です。つまりネガティブリスト制度では国内で使用しない農薬は輸入農産物に残留していても規制できなかったのです。 いま話題の古い輸入米にメタミドホスの残留していたのはこの制度が関係しているようです。

―余談5―
 ポジティブリスト制度で思わぬ?問題が出てきました。その一例がシジミの残留農薬です。新聞によると茨城県涸沼のシジミに水田の除草剤ベンチオカーブが0.04〜0.1ppm残留しており、 シジミに除草剤は登録されていませんので一律基準の0.01ppmを超えれば出荷停止になります。この薬剤は毒性が低く、ラットでの50%致死薬量は約1,200ppmで劇物でもありません。 同様のことが鳥取県などでも起こっており、その対策が検討されているようです。このようにドリフト(この場合は水田からの漂流ですが)が思わぬ害を起こします。


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