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園芸新技術・新資材情報



園芸用の便利な資材と技術情報

 キクや草花のより良い花を、より容易に、より揃って咲かせるための、便利な資材と技術を紹介します。これらは私が実験農場で実験をくり返し効果を確認したものと、 開発したもので、成果がまとまり次第逐次追加していきます

*北斎巴錦(殿様菊)について *透水剤を知っていますか?
*スピンアウトを知っていますか? *突き固め植えの効果
*快適な水分管理に“サーモゲルKIKU” *培養土作りの材料とその役割
*誰でも簡単にできる小菊の1ヶ月作り *とんでもないポットのすすめ
*新しい植物活性剤「鉄力あぐり」のすすめ *土壌微生物の活用
*参考文献と資材の入手先  


各写真をクリックすると大きな写真がご覧になれます。

北斎巴錦(殿様菊)について
★★ 由来 ★★
 昔、加賀のお殿様が参勤交代の途中、長野県の小布施に立寄られ、そこに飾られていたこの菊を大変お気に召して、名前をたずねられたが答えられなかったので殿様は、これより巴錦(ともえにしき)と呼ぶように、と命名された。このため地元の人々はこの菊を殿様菊と呼ぶようになった。


★★ 大変な長寿菊 ★★
 現在栽培されている観賞菊の寿命は意外に短く、ほとんどの品種は10年以内にカタログから名前が消えていく。これは花が小さくなったり、さし芽しても発根しにくい、草丈が伸びにくいなど、育てにくくなって、もとの美しさがなくなり、育てる人がいなくなるためだ。巴錦は葛飾北斎も好んだ菊だったらしく、北斎筆と言われている絵の中に、確かにこの菊と思われる花が描かれている。このことから130年以上の寿命を保っていることが推定される。


★★ 現在は ★★
 長寿を保った巴錦もさすがに老化がみられ、さし芽しても発根しにくく、育てにくい、と言う栽培者の苦労があったので、平成11年茎頂培養が行なわれウイルスフリー苗が作られた。その結果、発根しやすく育てやすい菊にもどり、名前も「北斎巴錦」として品種登録されて長野県小布施町の町役場、北斎館、菊花展などで町の花として秋には町内に沢山の花が展示され、見学者に珍しがられている。
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透水剤を知っていますか?
 透水剤は水の表面張力を小さくして、水を早くムラなくしみ込ませる働きがあります。 現在市販されているのは、

  • オーストラリアで砂ばくでの水の有効利用の研究から生まれた「サチュライド」
     (ピートモス等に吸着されて微粒状にした製品....サカタのタネ)
  • アメリカで鉢物の水やり省力化研究から生まれた「透水源」
    (液体をうすめて使用する製品.....ウチダケミカル)
の2種があります。
透水源の写真


★★ 用途は広く効果は長もち ★★

(1)鉢・プランターの水のしみ込み促進
  透水源2,000倍を潅注すると1ヶ月以上、水がよくしみ込む。サチュライドを培養土1リットル当たり2gを混合するか表面にばらまくと数ヶ月間水がよくしみ込むようになる。
 水のしみ込みが早いだけでなく、むらなくしみ込むために肥料が良く効き、非常に生育が良くなる。
 ピートモス等が乾きすぎて水をはじく場合でも簡単にしみ込む。

(2)根詰まりになってもドブ漬け不要
 これまでは鉢中が根で一杯になると、水道(みずみち)が出来て水がしみ込みにくいのでドブ漬けしていたが、透水剤を使えば一発で解消する。

透水源の効果
注水前 注水後


(3)さし穂、切花の水揚げ促進
透水源の2,000〜5,000倍液につけると短時間で水が揚がりさし穂がシャンとなる。

(4)Bナインの効果アップ
500ccのBナイン液に透水源1滴を加えると、Bナインの附着が非常によくなり、効果がアップする。

(5)もっと使える
腐葉土の積込みや切返しの時、乾燥肥料・発酵リン酸の材料をまぜ合せる時の水に5,000倍液を加えると、全体に水分がむらなくしみ込んで良い腐葉土、乾燥肥料発酵リン酸ができる。畑や通路、庭などの水はけの悪い所に透水源2,000倍をかけると水はけが良くなる。

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スピンアウトを知っていますか?
★★ スピンアウトとは? ★★
 アメリカで果樹をコンパクトに仕立てるための根域制限剤として開発され、その後野菜花きの機械植用のトレーに使用されるようになり、 トレーに根がからまらないため、植付け適期が延長され、スムーズな植付けがされるようになった。

 キク草花での利用で大変有効なことが分かりましたので紹介します。現在は、エアゾール、トレー、ポットの3種類がウチダケミカルから販売されています。


★★ キク・草花での利用 ★★
*さし芽で根の密生した苗を作る

※各写真をクリックすると大きな写真が見られます。
内側にスピンアウトを塗付したトレー、又は6センチポリポットの内側にスピンアウトエアゾールを吹きつけて使用する。 さし芽用土はバ−ミキュライト4、鹿沼土4、クンタン2を混合したものを用い、さし穂の切口に発根促進剤ルートンをまぜたトノコのダンゴをつけて挿す。
スピンアウトトレーへの草花のさし芽
スピンアウトトレー(左)とポット苗のさし芽苗


キクの場合、12日位で発根しはじめ、根が壁際まで伸びると、そこで生長が止まり、新たに幹から発根してくる。 そして次の根も壁際でストップするとまた新しい根が発生する。その結果、さし芽後20日頃には土中に入った部分全体からブラシ状に根が発生したすばらしい苗が出来る。 発根のはじまる12日目頃に、アミノ酸とリン酸を多く含む液肥(アミノPK、GK365など)を1,000倍で葉面散布すると根の発生が早まり、 活力ある良苗に仕上がります。

 壁際で伸長を止めた根の先端はいくつかに分岐しているので培養土で植付けたあとの活着も早く、旺盛な生育をします。

スピンアウトトレー  根がブラシ状になっている。


*小鉢での育苗でガッチリした老化しにくい苗を作る

 市販のスピンアウトポット(10.5センチ、ウチダケミカル)又は3.5号〜6号のポリポット、駄温鉢、素焼鉢の内側にスピンアウトエアゾールを吹きつけて使用します。 
5号鉢(左)と5号ポリポット(右)
へスプレー


 スピンアウト処理のポットに植えた苗は、さし芽の場合と同様に根が壁に近づくと伸長が止まって先端が分岐し、 株元から新たな根が発生することをくり返し、根数が急激に増加します。 


 鉢から抜いてみると、鉢底や周辺への根巻きがみられず、外側のくぼんだ部分に白い根の先端がわずかにのぞいて見えるだけですが、 内部は根が多いため根鉢がくずれることはありません。


右株が
スピンアウト
右株が
スピンアウト
 地上部は旺盛に生育しますが、徒長することなく、ガッチリとした生育を示します。

 スピンアウトポットによる育成苗は、根巻きによる根の老化がないため、移植適期が大幅に延長され、しかもポットlから抜きやすく、移植、定植後の活着・生育良好です。

*仕立て鉢への処理も有効
スピンアウト使用 無使用
5号〜9号鉢の内側へ、スピンアウトエアゾールを吹きつけ、これに定植して育成・開花させても、根巻きによる根の老化がないため旺盛な生育・開花を続けます。


*今後の課題
 大輪菊の場合、生育が旺盛になりすぎる傾向がありますので、現在肥料の調節、草勢調整対策を研究中です。 スピンアウト処理したトレー、ポットの効果は2年以上たってもほとんど変わらず持続します。

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突き固め植えの効果
★★ 突き固め植えとは? ★★
鉢植えの鉢土を強く押し固めて植え付けるもので、9号鉢のような大きな鉢の場合は野球のバット、又はこれに似たようなもので突き固めて植えます。 根の働きを強め、根が鉢の外側に根が集中することや根腐れを防ぎ、根づまりになりにくく旺盛な生育をします。

★★ 突き回め植えの誕生 ★★
 菊作りでは、鉢中にむらなく根を張らせ、根腐れさせないよう、生育後半まで水はけ良く通気性の良い培養土づくりが課題でした。 そのため、各地で各人各様の工夫をこらし、モミガラ、大豆ガラ、落花生カラ、スイートコーンの茎などを培養土に混合することが試みられました。 その中で北陸地方では、カヤ、ススキ等を2〜3年堆積してカヤ養土が作り出されました。

 ところが9号鉢に定植する際、あまりにフワフワしておさまりが悪いのでバットで突き固めて植えたところ、大変生育が良く、 巨大輪が咲いたため評判になり急速にひろまりました。

 当初、カヤ養土の場合の特殊技術と思われたのですが、普通の腐葉土でも成果が上がることが分かり全国に普及しました。

★★ 鉢土を突き固めるとなぜ生育がよいのか? ★★
 昔から鉢土も畑の土も、なるべくフワフワした状態が良いと信じられてきましたので、鉢土を突き固めたほうが生育が良くなるとは信じ難いことでした。 また、試してみて結果が良くてもなぜ良いのか全く分かりませんでした。

 何年かたって、国と県の試験場のトマトやさつまいもを使った研究結果から次のようなことが分かりました。

  • 土のすき間が少なくなって水を含みすぎにならない。このため鉢の中央部にもよく根が発達し、根腐れにもなりにくい。
  • 土がしっかりつながるため、上部が乾きはじめると毛細管現象で下部の水分が上がってきて、鉢中の水分、肥料分が均一化し順調な生育が続く。
  • 根が土と密着することによって根の働きが大幅に向上し、少ない根で順調に生育するため根づまりしにくく長期間旺盛な生育をする。

★★ 突き固め植えの効果のでるもの ★★
キクのほか草花全般で効果があり、小鉢、中鉢、大鉢、プランター、いずれにおいても効果が大きい。
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快適な水分管理に“サーモゲルKIKU”
★★ サーモゲルKIKU”とはどんなものか ★★
 (株)興人が屋上緑化のために開発した感温性吸放水ポリマーを、(株)フードパルが土壌改良成分を加えて白い粒状にしたものです。

 1グラムで500cc以上の水を吸収してゲル(ゼリー状)になり、土壌の温度が設定温度(20、25、30℃)を上回ると、ゆっくりと水を放水します。 このため、朝夕の涼しい時間に十分に水やりすると、たくさんの水を吸収貯留し、昼間温度が上がると放水するので旺盛に生育し、夕方温度が下がると“サーモゲルKIKU”が水を回収するので、 夜間は水分過剰にならず徒長することもなくガッチリと育ちます。

 また、設定温度に達しない低温期には、放水しなくても“サーモゲルKIKU”から直接吸水することもできるので、貯水タンクの役割も果たしてくれます。

★★ “サーモゲルKIKU”の使い方 ★★
 培養土1リットル当たり3グラムの“サーモゲルKIKU”を、ていねいに混合するだけで良く、1回の混合で1年以上効果が持続します。

4号ポットへの潅水3日目(左の鉢がサーモゲル入り)
ガザニヤ苗の生育状況(左の鉢がサーモゲル入り、生育の差が歴然)
ガザニヤ苗(左のサーモゲル入り386gに対して右の普通土は258g)
潅水3日目のルドベキア(手前がサーモゲル入り、前方の苗には萎れが)

★★ “サーモゲルKIKU”の効果 ★★
 土層表面が乾きにくいので、根の張る範囲が広くなり良く育つ。

 吸水してゲル状になった“サーモゲルKIKU”は細かい土(微粉)を吸着して団粒構造にするため、根の活動が活発になる。

 ミネラルの補給、水の活性化効果もある。

○これらの効果で、生長が早くなり大きな花が咲く(草花では花数が多くなり花期が長くなる。)
○水やりにかかっていた時間を他の手入れ作業に当てることができる。
○菊では冬至芽の発生が非常に多くなる。
○3〜4日に1回の水やりでよいので、小旅行も安心(毎日水やりしても過湿害がでない)

8月、潅水4日目の状況(左がサーモゲル入り) 右の鉢がサーモゲル使用で、左に比べ冬至芽の発生が顕著
右;サーモゲル入り、花の盛り上がりが良くなり、葉も3枚多い サーモゲル使用によって沢山発生した冬至芽
サーモゲル使用;冬至芽の発生状況 サーモゲルKIKU


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培養土作りの材料とその役割

★★ 赤玉土改良の材料 ★★
●赤玉土(60%):
 いつでもどこでも、同じ品質のものが安定して入手できる基本になる土。しかし酸性で、リンサンを吸えなくしてしまう、痩せた土である、 という3つの欠点がある。  

●米ぬか(7.5%):
 リンサンを多く含み、微生物のえさになり発酵を促進する。  

●クンタン(7.5%):
 微生物の増殖を助け、その住処となるほか、カリ・カルシウムを補給し、肥料もちを良くし、におい・有害物質を吸着する。  

●牛ふん堆肥(7.5%):
 おだやかな肥料効果と土壌改良効果が長く続く。多くの有用微生物も含んでいる。  

●カニガラ(7.5%):
 チッソ・リンサンのほか多くのキトサンを含んでおり、高温で発酵しやすい。キトサンは病気への抵抗力を強める。  

●改良土の素(10%):
 二つのタイプのリンサンと80種類の有用微生物。光合成を活発化させる二価鉄イオンを長時間出しつづける「鉄力あぐり」を配合してある最新土壌改良剤。  

●砂糖:
 微生物のえさとなり、短期間で改良効果を発揮させる。  

●木酢:
 微生物の増殖を助け、植物の組織を丈夫にする。臭いを消す効果もある。  

●透水源:
 水をすばやくしみこませる力が強く20,000倍でも効果がある。多すぎる水の排水効果もある。植物の吸水を早める効果も大きい。  

福助作り
生の赤玉土を使用した培養土区
福助作り
赤玉土を発酵改良して作った培養土
満開の福助作り




★★ 培養土調合の材料 ★★
●腐葉土(35%):
 排水性・保水力・保肥力にすぐれ、微生物が住みやすい理想に近い土。  

●改良赤玉土(30%):
 欠点が消えた、理想に近い土。  

●草炭(10%):
 中国の湿地帯で葦やヨシが何千年も堆積して出来たピートモス状の土であるが、ピートモスと違って、中性で水をはじかない。 培養土に混合すると毛細管現象を良くし、表皮が乾くと下から水が上がってきて鉢土全体の水分均一化がはかられる。  

●ゼオライト(5%):
 天然鉱石の一種で、多種多量のミネラルを含んでおり、水を活性水化する働きもある。根腐れ防止と生育促進効果がある。  

●クンタン(10%):
 赤玉土改良で説明のとおり、全体にまぜるとより効果的。  

●改良土の素(10%):
 赤玉土改良で説明のとおり、10パーセント混合が理想的。  

●サーモゲル(3g/リットル):
 感温性吸放水剤。20・25・30度に温度設定されたものを混合してあるので、設定温度より低いとき水をやると、サーモゲル1グラム当たり50ccの水を吸水保持し、 設定温度より土温が上がると、ゆっくりと放水する。これを繰り返すので、水遣りは週2回でもしおれず、旺盛な生育をつづける。  



★★ 培養土作り ★★
1.菊作りで一番大切なことは良い培養土を早めに作ること
良い培養土の条件
 水はけ・通気性がよく、水持ちがよいこと。肥沃で保肥力があること。リンサン吸収を妨げないこと。有用微生物が多いこと。  
 
もっとも育てやすい培養土の配合割合
 腐葉土40%、改良赤玉土35%、クンタン10%、ゼオライト5%、草炭10%。これらを混合した土1リットル当たりサーモゲル3グラムを混合する。  
 
早めに材料を調合して熟成させて使う
 水分を加えて良くかき混ぜ、通気性のよい土嚢袋などにつめて、ブルーシートなどの雨よけをかけておくと、材料が良くなじみ、有用微生物が増えて育ちやすい土になる。

 
2.赤玉土は改良して使う
 赤玉土は全国どこでも季節を問わず、同質のものを入手出来るので大変便利な土だが、そのままでは次のような3つの欠点があるので改良して使いたい。

 (1)pH5.0〜5.3で酸性が強い
 (2)EC0.0で非常に痩せた土である
 (3)リンサンと接触すると植物が吸収できないものに変わってしまう

改良の手順は後述の「赤玉土は改良して使いましょう」を参照のこと。  

3.市販の腐葉土は改良強化して使う
 市販の腐葉土にはリンサンが入っていない。また発酵不十分なものが多いので、改良強化して使いたい。  
 
<改良の手順と量の目安>
 市販の腐葉土80リットル、米ぬか10リットル、土の素14リットルに水20リットルをかけてよく混ぜ、土嚢袋等の通気性のよい袋に詰めて雨よけの下に置く。

 通気性のよい状態で発酵させることがコツ。

 
4.市販の菊培養土は改良強化して使う
 市販の菊培養土はメーカーによって品質差が大きく、満足できるものが少ないので改良強化して使いたい。  
 
<改良の手順と量の目安>
 市販の菊培養土80リットル、土の素14リットル、腐葉土20リットル、ゼオライト5リットル、クンタン10リットルに水20リットルをかけてよく混ぜ、 土嚢袋等の通気性のよい袋に詰めて雨よけする。

 
5.便利な新資材サーモゲル
 感温性吸放水剤で朝夕の涼しいときに水やりすると沢山の水を吸収し、昼間温度が上がると、ゆっくりと放水し、温度が下がると水と回収する(1gで50cc)。 サーモゲルを入れると生育が早くなり大きな花が咲く、また3〜4日に1回の水やりでもしおれないので、水やりにかかっていた時間を他の手入れに当てることが出来、2泊3日の旅行も安心して行ける。



★★ 赤玉土は改良して使いましょう ★★

 菊の培養土をはじめ、園芸用の土には赤玉土が広く使われています。赤玉土は、栃木県の鹿沼地方が主産地ですが、全国どこの園芸店やホームセンターでも、 季節を問わず、品質の揃ったものが簡単に入手できるので大変便利な土です。

 しかし、赤玉土はそのままでは大きな欠点が三つあります。

 その1は、リンサンを植物が吸収しにくい形に変えてしまうため、折角与えたリンサンが効かなくなってしまうこと。
 その2は、酸性土(pH 5.0〜5.3)であるため、菊の生育が悪いこと。
 その3は、痩せた土(EC 0.0)であるため、肥料が効きにくいこと。
で、皆さんも鉢土をひっくり返した時、赤玉土に根が絡んでいない状況をご覧になったことがあると思います。

 これらの欠点を直し、有用微生物が多く、リンサンが良く吸収される良い用土になるよう、赤玉土の改良をお薦めします。菊だけでなく、 ほとんどの植物の生育に効果を発揮します。

 この方法は、冬季で2週間、4月以降の暖かい時期ですと1週間で完全に出来上がり、pH 6.3、EC 1.0の菊作りには最適のすばらしい土に生まれ変わります。

 盛んに醗酵しても、クンタンと木酢液がにおいを吸着しますので、住宅団地で作ってもにおいの発生が無く安心です。また、病気の発生も少なくなります。

●材料の目安
 赤玉土4〜5袋(80リットル)、米ぬか半袋(10リットル)、もみ殻クンタン半袋(10リットル)、牛糞堆肥半袋(10リットル)、土の素1袋(14リットル、土の素がないときは、 バットグアノ2kgとバイオゲン500g、または焼成骨粉6kgと発酵菌)、カニガラ10リットル、砂糖400g、木酢液50cc、透水源5cc、水25リットル

●作り方の手順
1)水に透水源、木酢液、砂糖を入れて溶かす。
2)米ぬか、もみ殻クンタン、牛糞堆肥、土の素、カニガラをシートの上でよくかき混ぜ、均一に広げる。
3)2)の上に赤玉土を広げる。
4)広げた赤玉土に1)の液をジョロで丁寧にかける(赤玉土だけをしめらせる)。
5)全体を良くかき混ぜ、土のう袋など通気性のよい袋に詰め、雨よけの下に置く。

 冬で5日、春なら2日で発熱し、その後、数日経って白い菌糸が広がったら出来上がり。乾燥して保存すれば1年経っても大丈夫です。

1. 左上;米ぬか、右上;クンタン、手前;牛糞堆肥(配合比 1:1:1) 5. 全体をよくかき混ぜた状態(これを土のう袋に詰める)
2. 米ぬか、クンタン、牛糞堆肥をよくかき混ぜる 6. 改良済みの赤玉土(白い菌糸に包まれて完成)
3. 米ぬか等の混合物の上に赤玉土(小粒)を広げる 7. 左上;土の素、右上;バットグアノ、手前の白い粉;焼成骨粉
4. 赤玉土に砂糖、木酢液及び透水源入りの水をジョロでかけ濡れた状態 8. 土の素、バットグアノ


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誰でも簡単にできる小菊の「1ヶ月作り」
 菊は植えてから開花まで長くかかるから、と敬遠している人が多いのではないでしょうか。でも「1ヶ月作り」なら簡単にすぐ出来上がります。

 「1ヶ月作り」とは、私、上村 遙がお薦めしている新しい菊の仕立て方で、名前のとおり、植え付けて1ヶ月で開花鉢を作ってしまうものです。

 品種を選び、日長と温度を調整すれば、1年中、いつでも作れますが、誰でも簡単に作れる、9月中旬から10月上旬にさし芽して、 発根次第植え付けることをお薦めしています。

★★ 品  種 ★★  
クッションマム、懸崖菊、スプレー菊、ポットマム、古典菊(伊勢菊、肥後菊等)等、小輪の菊が適しています。

★★ 挿 し 芽 ★★  
9月中旬〜10月上旬、小さな蕾が沢山ついた芽先を10〜15センチに切って挿します。挿し芽は1年中で最も発根しやすい時期ですから、初めての人でも簡単に苗を作ることができます。


★★ 植え付け ★★  
平鉢・平箱:図案、模様、文字を作る
盆栽鉢:盆栽の感じで寄せ植えを楽しむ
小 鉢:山野草の感じで可愛い鉢に
5〜6号鉢:沢山の苗を植えてポットマム風に
ハンギングバスケット:これピッタリ

★★ 肥料と水 ★★  
 苗にはすでに蕾が付いており、蕾の開花にはあまり多くの肥料はいらないので、苗を植え付けて8〜10日後に1,000倍の液肥を2回やれば十分です。

 水は、土の表面が乾くのを待ってたっぷり与えます。

★★ 開  花 ★★  
 苗を植え付けて1ヶ月足らずで開花します。
 11月になって開花し始めたものは、気温が低いため花もちが良く、管理がよいと年末まで楽しめます。

平鉢で星を画く 盆栽鉢に肥後菊とスプレー菊
角鉢で好きな花の寄せ植え 小さな鉢に嵯峨菊
クッションマムを3本ずつ植えてみた 狭い所でも沢山の花が楽しめる
盆栽鉢にスプレー菊


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とんでもないポットのすすめ
 とんでもない名前を付けたものですが、とんでもないポットというのは、まったく新しい機能をもった、植物を育てやすいスリット鉢の名称です。  

★★ 外観形状 ★★  
5号とんでもないポット  写真(右)のように、六角形と八角形のポリ鉢で、縦に根を誘導するミゾがあり、その下端に排水スリットがあって、 普通の鉢にあるような鉢底中央の排水穴はありません。

★★ 特 長 ★★  
 通常、植物の根は鉢壁に到達すると、横に回ります。根の吸収力が強いのは先端の数センチですから、一本の根がいくら長く伸びても根の働きはあまり増えません。 特に鉢の下部では根がぐるぐる回って長く伸び、急速に老化が進みます。このため、小さな鉢から順次大きな鉢へと、 ひんぱんに鉢替えをしないと順調な生育を続けることが出来ません。  

 ところが、とんでもないポットに植えると、根は鉢壁に到達して横に回ろうとすると、すぐに縦溝に誘導されて縦に伸びます。そして底部のスリットに近づくと、 スリット付近が乾燥しているため、伸長が止まります。  

 そして根の伸長が止まると、株元から新しい根が発生し、はじめの根と同じ動きをします。このようなことが繰り返されると短い根が増え続け、吸収力の強い根の先端の数が非常に多くなって、 旺盛な成長を長期間継続します。  

 このため鉢替えの間隔を大幅に延ばすことが出来、植え替えの時の活着とその後の生育が飛躍的に良くなります。  

 昨秋の「趣味の園芸」(テレビ番組)で、果樹の鉢作りにスリット鉢が最も成績が良く、植え替え間隔を長くすることが出来ると解説されて反響を呼びましたが、 私は菊と草花でいろいろの鉢と比較した結果、植物を育てるのに大変優れた鉢であることを確認し、講習会などですすめています。  

5号とんでもないポットのキクの根 5号駄温鉢のキクの根
5号ポリポットのキクの根 5号とんでもないポットの1年半たった花木の根


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新しい植物活性剤「鉄力あぐり」のすすめ
★★ 鉄力あぐりとは? ★★  
 鉄力あぐりは愛知製鋼が開発した新しい植物活性剤です。鉄力あぐりの主成分は酸化第一鉄(FeO)で、有機酸と反応して二価鉄イオン(Fe2+)を長期間にわたって出しつづけます。 この二価鉄イオンが葉緑素を増加させ、光合成を活発化させるので、生育・開花が早くなり、貯蔵養分をふやすので、花付きが良くなったり、糖度が高くなったりします。 菊では、花弁数が多く巨大輪になります。

★★ 鉄力あぐりの使用法 ★★  
 腐葉土・堆肥など、有機酸を出すものをたっぷりまぜた培養土1リットルあたり鉄力あぐり5グラム混ぜるだけで簡単です。花壇や畑では一坪当たり2キログラムの鉄力あぐりを3年ごとに、 たっぷりの堆肥といっしょに表層10センチの土に混ぜます。

★★ 更に効果の大きい使用法 ★★  
 鉄力あぐり入りの「改良土の素」を培養土に10パーセント加えると、鉄力あぐりを単独で使用した場合より、更に効果が大幅にアップします。 これは十分なリンサン吸収と、バクテリア等が鉄イオン吸収を助けることによる相乗効果だと考えています。

★★ これまでに分かった 鉄力あぐりの効果 ★★  
 ジニヤ・キバナコスモス・ダリア等草花では、苗の生育が早くなり、開花が10日余り早くなり、花付きも多く色鮮やかとなった。

 観賞用トウガラシでは茎葉の成長差はあまりみられなかったが、開花・結実・色付が10日余り早くなった。

 菊の挿し芽に使用すると、発根が2〜3日早くなり、根数・根毛の多い良い苗が出来た。

 菊では生育が早く、葉数が多く茎葉が大きくなった。その結果、花弁数が多くなりボリュームのある巨大輪になった。 また、黄化症に特効がある。

 トマトの収量が多くなり、糖度が2度高くなった。

 小松菜・かきなの成育が非常に早くなった。

 スイカ・スイートコーンの甘みが増した。

 タマネギの味がおいしくなった。

福助作りでの効果
培養土 葉数 花弁数
標準 24 565
鉄力あぐり 27 590
改良土の素
(鉄力入り)
28 654
生育差
左:鉄力あぐり
右:標準培養土
生育差
左:鉄力あぐり
右:標準培養土
標準培養土区
黄花コスモス(左)と
ジニヤ(右)
鉄力あぐり区
黄花コスモス(左)と
ジニヤ(右)
黄花コスモスとジニア
左:標準培養土区
右:鉄力あぐり区
5号鉢での大菊の育苗
左:標準培養土区
右:鉄力あぐり区
5号鉢での大菊育苗
左:標準培養土区
右:鉄力あぐり区
大菊国華吉兆
左:激しい黄化症。この状態で鉄力あぐり施用。
右:鉄力あぐり施用後、20日たった回復状況。


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土壌微生物の活用
★★ 分解微生物 ★★  
 有機物や肥料を分解して植物が吸収しやすくしてくれる。

 リンサンや鉄など、そのままでは植物が吸収しにくい成分を食べる微生物が居り、それらの微生物の屍骸から植物が成分を容易に吸収出来るようになる。

 微生物が有機物を分解するときにアミノ酸や有機酸、酵素、植物ホルモンなど植物活性物質も生産されるので、これらが植物の生育を良くする。

★★ 根圏微生物 ★★  
 根の近くに住み、根から分泌される糖分やアミノ酸などの栄養物をえさにして増殖し、植物の肥料やミネラルの吸収を助ける。そして微生物は根の活力を高め、 病原菌から守る働きもする。植物の光合成で作られた栄養分の10パーセントは根から分泌される。

★★ 共生菌 ★★  
 菌根菌などは根の中に入り込んで住みつき、根から栄養分をもらって土中に菌糸をのばし、リンサンやミネラルを集める。植物はこれを吸収して生長する。 互いに助け合うので共生菌と言う。菌根菌は生きた根の中で生活するため、人工的な増殖が難しかったが、組織培養技術の発達によって増殖・商品化が実現した(ドクターキンコン)。

★★ 拮抗作用 ★★  
 多くの微生物が住んでいると、お互いが干渉・牽制しあって、特定の微生物だけが増えないようにするので、病原菌の急激な増殖も防ぐ。

★★ 土壌微生物を助ける炭の働き ★★  
 炭は微生物の住処になり、菌糸がびっしり張って植物の生育を助ける。

 炭は物質を吸着する働きがあるので、肥料を保持して逃さない。水や空気も保ちやすいので、細根や根毛が増える。また老廃物質も吸着する。

 電子農法では、電気で水を処理してアルカリ〜中性にして使用するが、水道水に炭を入れただけでそれに近い効果が上がる。

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参考文献と資材の入手先

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新版・図解菊作りコツのコツ
  上村 遙 著
農文協
〒107−8668
東京都港区赤坂7−6−1
TEL:03−3585−1141
FAX:03−3589−1387
URL:http://www.ruralnet.or.jp/
コンテナ園芸テクニック101条
  上村 遙 著
キクの絵本
  上村 遙 著
楽しさいっぱい菊ガーデン
  上村 遙 著
透水源
スピンアウトエアゾール
スピンアウトトレー
スピンアウトポット 
アミノPK
土の素
サーモゲルKIKU
有限会社ウチダケミカルコーポレイション
〒300−4204
茨城県つくば市作谷1711−12
TEL:029−869−1777
FAX:029−869−1666
URL:http://uchida-chemical.com/index.html
サチュライド サカタのタネ
〒224−0041
神奈川県横浜市都筑区仲町台2−7−1
TEL:045−945−8824
URL:http://www.sakataseed.co.jp/
GK365 マルタ小泉商事
〒250−0204
神奈川県小田原市曽我谷津612
TEL:0465−42−0737
とんでもないポット 南出株式会社
〒513−0801
三重県鈴鹿市神戸7丁目8−5
TEL:0593−82−0040
FAX:0593−83−6526
URL:http://www.minamidekk.co.jp/
鉄力あぐり 愛知製鋼株式会社
〒476−8666
愛知県東海市荒尾町ワノ割1番地
TEL:052−603−9172
FAX:052−603−9161
URL:http://www.aichi-steel.co.jp/sp_info/SPINFO/TetsuRiki-Agri/TetsuRiki-Agri.html
(鉄力あぐり・あくあ特設ページ)

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