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ゴキブリの生活

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 ゴキブリは江戸時代から「あぶら虫」とか「ごきかぶり」とか呼ばれていました(図6・7)。

 前者は今でも呼び名に使われ、植物にむらがる「アブラムシ」の仲間とよく混同されます。また後者は「御器噛り」の意味で、 ゴキブリが食器をなめることに由来する分かりやすい名です。

 ところが、明治時代にある先生が教科書の中で「ゴキブリ」と“誤記”したばかりに、これが踏襲されて意味不明な名になってしまいました。

 また、野口雨情の「こがね虫は金持ちだ」に始まる有名な童謡の“コガネムシ”は、金属光沢のある甲虫のコガネムシではなく、 チャバネゴキブリだという説があります。雨情の故郷の茨城県ではゴキブリを方言でキガネムシと呼んでいたことに加えて、その体系が小判に似ていること、 雌は腹端に昔の財布(きんちゃく)のような形の卵の袋(卵鞘)をつけて持ち歩くことなど、この童謡の主人公としてふさわしいかもしれません(下:図8)。

ゴキブリの卵の袋(卵鞘)の例 (図8)
チャバネゴキブリの卵鞘 クロゴキブリの卵鞘 ワモンゴキブリの卵鞘 トビイロゴキブリの卵鞘
チャバネゴキブリ クロゴキブリ ワモンゴキブリ トビイロゴキブリ

 ゴキブリは短期間にやたらに増えると思われていますが、卵から成虫になるまでにチャバネゴキブリで約3か月、大型種では2年もかかります。 成虫の寿命は前者で10か月、後者で1年以上に及び、その間に何回も産卵を繰り返します。また、屋内では天敵が少ないために、途中で死亡する個体は少なく、 増殖効率はかなりいいようです。

 ゴキブリの仲間は夜行性で、昼はガスレンジや冷蔵庫の回りなどの暖かく狭い場所に親子一族郎党が集団で潜んでいます。たまたま時間外に迷い出た奴をスリッパで叩くと、 精神衛生には良くてもその裏には何十倍の仲間が温存されています。

 隠れ家の集団を維持しているのは直腸からお互いが分泌する集合フェロモンによるものです。なお、翅がなく腹部がむき出しになったゴキブリを見かけ、 人によっては翅のあるゴキブリよりも嫌っています。野生の種類には成虫になっても翅のない種類がたくさんあります(図1・2・10) が、屋内で見られる翅のないゴキブリは幼虫で、最後の脱皮で翅のある成虫に変身します(図9)。

マダガスカル
オオゴキブリ

(図1)
サツマゴキブリ
(図2)
薬用チュウゴク
ゴキブリ

(図10)
キョウトゴキブリ(図9)
成虫 幼虫

 ゴキブリの成虫は飛ぶことができますが、ヘリコプターのような具合にはゆかず、そのためには助走が必要な飛行機型です。だから、 ビンの口の内側にバターを塗っておくとこれに引かれて中に落ちたゴキブリは脱出できなくなります。しかし、このビン(バタートラップ)を洗わずに使い続けると、 だんだん効果が落ちてきます。どうやら先に捕まって死んだ個体が危険を知らせる分散フェロモンを出しているようです。

 また、昭和46年(1971)には、画期的なゴキブリ捕獲器「ゴキブリホイホイ」が登場し、3か月で27億円を売り上げるという画期的なヒット商品になりました。 しかし、このトラップは餌のない条件下では効果を示すものの、台所のような場所で全滅を期待するのは無理なようです。

もくじ  野外から屋内への道  文明害虫

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