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木彫祭具のタガメ

(インドネシア)

 前にこのシリーズでインドネシアのケラ(No.5)とカマキリ(No.19〜21)を紹介したが、」今回のタガメはこの国の”第三の虫”である。 1986年秋、ジャカルタのデパートの祭具売り場に何体も並んでいたが、1年後には消えていた。ぼくはこれをてっきりカマキリと思い込み、 祭具であることと魚を捕食している非現実的な構図に、制作の由来を解くカギがあると考えていた。しかし、ある友人から「タガメでは?」と指摘され、 目からウロコが落ちた。ただ、この国にはタイや中国のようなタガメ食の習俗はなく、制作の意図はやはり不明である。金色に彩色した軟木の一体彫りで、 10本の脚と球状触角を持つ異様な形態を呈する。体長36cm。


 また最近、東京農大の河合省三氏が、バリ島のとなりのロンボク島でタガメの飾り付きの篭(写真)を採集し、ぼくは悩んだ末、香港の象牙の蝉の逸品と交換してもらった。 タガメもまた、こうして複数の作品が現れると、ますます昆虫民族学的な興味がわく。が、とりあえずは、この交換の損得をめぐって頭がいっぱいである。


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