ホーム読み物コーナー > 日本の特別天然記念物【動物と植物】 > 八代のツルおよびその渡来地

八代(やしろ)のツル
およびその渡来地



所在地:山口県周南市八代・中須南、下松市瀬戸
指定の経緯:
 大正10年(1921) 3月3日天然記念物指定、昭和30年(1955) 2月15日名称変更・特別天然記念物指定(基準:動物(2))、 32年(1957) 7月31日名称変更、平成元年(1989) 8月14日追加指定(基準:動物(1))


八代のツルおよびその渡来地
写真をクリックすると大きな
画像をご覧になれます)
 山口県南東部に位置する旧熊毛町の北部、烏帽子岳に連なる山ふところの八代盆地(標高300m)を中心に、ナベヅルが越冬のため渡来する。指定地域は、旧八代村全域1,900haが主体。

 ナベヅルは、日本に渡来するツルのうち最小のもので、全長100cm・翼長50cm・翼開長155cm・体重4kg。頭頂は赤い皮膚が露出し、額は黒く、顔から頚は白く、 虹彩は赤色。体は灰色。幼鳥は褐色がかった灰色で、頚から上にも褐色の産毛。体色が鍋底についた煤(すす)のようなところから「鍋鶴」と名付けられているが、 衣をかぶった姿に見えるところから「きぬかつぎ」という上品な異名もある。

 ロシア極東地方と中国北東部のアムール川・ウスリー川流域から北の湿地帯で繁殖し、幼鳥が親鳥とほぼ同じ大きさになる9月上旬ころから南へ向かって出発する。 朝鮮半島を通り対馬海峡を渡り、初霜の降りる10月下旬から翌年1月中旬に2〜4羽の家族単位で渡来して越冬する。

 各家族は畦・小径・小溝などを境界とする一定の縄張りを持ち、それが1ha以上になるものもある。親離れしている2年目の若鳥は、群れを作って縄張りの間を移動する。

 日中は盆地の水田や周辺で餌を求め、夜は山あいの水田やはげ山にあるねぐらで休む。餌はモミ・ムギ・草の実や根・水草・昆虫・ミミズ・タニシ・小魚など。


← 目次に戻る   ← 前に戻る   次に進む →