Vol.7 No.4
【特 集】 第14回若手農林水産研究者表彰受賞者の業績


キュウリホモプシス根腐病の総合防除対策の確立
岩手県農業研究センター     岩舘 康哉
 東北地方の露地夏秋キュウリで深刻な問題となっている難防除病害のキュウリホモプシス根腐病に対する効果的な土壌消毒手法や,転炉スラグ(石灰肥料)を活用した新たな被害軽減技術を開発した。さらに,農業改良普及センターと一体となった現地実証先行型の取り組みにより,総合防除対策の構築と成果普及を迅速に展開し,本病被害の拡大防止と軽減に結びつけることができた。総合防除対策で活用される石灰肥料は,岩手県釜石市に所在する東日本大震災による津波被災企業(ミネックス蝓砲製造・販売しているものであり,本成果の普及によって,販売数量が増加するなど,被災企業の事業再開支援にもつながった。
(キーワード:クロルピクリン,転炉スラグ,土壌消毒,ホモプシス根腐病,Phomopsis sclerotioides
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野生種を活用した極多収サトウキビ品種の育成と普及
農研機構 九州沖縄農業研究センター    境垣内 岳雄
 南西諸島農業の基幹は,畜産業と製糖業である。畜産業の振興に向けて,サトウキビ野生種を利用した交雑により,収量性ならびに耐病性が極めて優れる3つの飼料用サトウキビ品種を育成した。また,年2回収穫に基づく飼料用サトウキビの栽培体系を新たに構築し,南西諸島全域で適用できることを示した。これにより,飼料用サトウキビを主要牧草ローズグラスの代替とし,飼料を増産する道を拓いた。開発した育種素材は,収量安定を実現する製糖用サトウキビの品種育成にも繋がるものであり,製糖業への貢献も期待される。
(キーワード:飼料用サトウキビ,南西諸島,野生種,品種育成,年2回収穫栽培)
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遺伝子組換えカイコの作出および産業利用の高度化
農研機構 生物機能利用研究部門    坪田 拓也
 カイコは大量のタンパク質を生産する能力があり,遺伝子組換えカイコによる医薬品等の生産が一部の企業で事業化されている。カイコの実用化のさらなる拡大のためには,カイコにおける組換え技術の高度化の推進が必要である。本稿では,①カイコに導入した遺伝子の発現を自在に制御しうるプロモーターの特定,②ゲノム編集技術を利用した遺伝子挿入技術(ノックイン法)の開発,③大量のタンパク質を合成する能力を持つ組織であるカイコ絹糸腺における遺伝子発現制御機構の解明,について紹介する。これらの成果はいずれも組換えカイコの高度利用を実現するものであり,新たな産業の創出や事業化の加速化に大きく貢献するものである。
(キーワード:カイコ,遺伝子組換え,ゲノム編集,プロモーター,有用タンパク質生産)
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養豚排水の窒素低減に関する硫黄脱窒技術の開発
千葉県畜産総合研究センター     長谷川 輝明
 養豚場等からの排水に含まれる硝酸性窒素等は,環境汚染や人への健康被害の観点から,水質汚濁防止法で規制されている。畜産では一般排水基準100mg/Lに対して,現在は暫定排水基準600mg/Lが適用さ れていることから,一般排水基準まで規制強化された場合に対応できる技術開発が求められている。本研究では,硫黄酸化脱窒細菌による硝酸性窒素等の処理技術に着目し,①従来の脱窒用資材よりも高性能で扱い やすい新たな資材,②土木用タンク等を転用した簡易脱窒システムの2つを開発したことで,硝酸性窒素等の処理能力が高く,実用性の高い技術を確立した。本技術は規制強化に苦慮する養豚場への普及が期待される 。
(キーワード:硝酸性窒素等,脱窒技術,硫黄脱窒,硫黄酸化脱窒細菌,養豚排水)
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花きにおけるゲノム育種基盤の構築とその利用
農研機構 野菜花き研究部門     八木 雅史
 DNAマーカーをはじめゲノム情報の活用による育種の効率化が期待されているが,花きにおける利用は世界的にも少ない。カーネーションの重要病害である萎凋細菌病抵抗性育種においては,DNAマーカーを 利用して選抜の効率化を図り,抵抗性品種「花恋ルージュ」を育成した。また,カーネーションを中心に多数のDNAマーカーを配置した連鎖地図や全ゲノム解読などゲノム情報を育種で活用するための基盤を整備した。今 後は,ゲノム情報を活用した新品種の育成やより多くの花きでゲノム情報が利用できる環境が整備されることが期待される。
(キーワード:カーネーション,DNAマーカー,連鎖地図,次世代シーケンス,全ゲノム)
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